上方に佳酒あり名は摂河泉≠ニいう。
豊かな内海と河川に培われた恵みの地、そこから生まれる旬彩才、全国より集う物産、そしてお隣り京の技・かたちが、混じり合い、溶け合うなかで育まれてきた上方の食文化。天下の台所と賞されたその上方で、町びとたちの心と舌に愛され、鍛えられてきた酒があります。摂津三酔・河内五酔・三郷十一酔の酒。上方ならではの洗練と繊細、そして質実の酔趣を受け継ぐ十一の酒蔵が、この度「上方摂河泉」の名の元に集いました。「大阪にこれほどの酒があったのか。」そうお感じいただければ幸いです。

 

 

 

一 秋鹿酒造(有)
古くから庶民の信仰を集めてきた能勢の妙見さん=Bその霊場の山懐、たおやかな里の風景の中にある、秋鹿酒造。里の人々と共に自ら田に出て、土に親しむ初代鹿之助以来の酒づくりは、今も確かに受け継がれ、至極の酒米「山田錦」の自家栽培はど、数々の試みに実を結んでいます。

 

七 オキナ酒造(株)
「遠つ飛鳥」と呼ばれた奈良の明日香と「近つ飛鳥」と呼ばれた河地飛鳥を結び、国際色豊かな文化が行き交ったであろう「竹之内街道」。オキナ酒造は、その文化の回廊のほとりで、古のロマンを感じさせる、大らかなまろみにこだわった、酒づくりに取り組んでいます。

 

二 清鶴酒造(株)
元禄のグルメ本「本朝食艦」にも紹介されている銘醸の地摂津・富田郷。清鶴酒造は、創業以来百数十年をこの里と共に歩んできた生粋の富田酒造元です。自ら目指すものは五味の調和を奏でる五感の酒づくり。その視線は、伝統に曇ることなく、厳しく酒の真味を問いつづけています。

 

八 西條(資)
中世、寺院での酒造が全盛の頃。「天野比類無シ」「美酒言語ニ絶ス」と謳われた僧坊酒「天野酒」。その豊かな酒の心を受け継ぎ、天野山金剛寺のご好意と地元愛酒家の声援に支えられながら、今に復活させたのが西條蔵。享保年間より、郷土の酒づくりに精魂を傾けてきた一途の蔵元です。

 

三 壽酒造(株)
阿武山山系の清冽な清水と、淀川の水運によって集められた良質酒米。その出会いと杜氏たちの技に磨かれて、江戸への「くだり酒」として名声を博した摂津富田の酒。壽酒造は、大量生産では決して真似のできない、そんな由緒ある酒づくりを頑なに守り、今に伝えつづける蔵元です。

 

九 井坂酒造場
豊饒の海、大阪湾。井坂酒造は、かつてこの地が「ちぬの海」とよばれていた頃から、この地の粋人たちに愛されつづけてきた蔵元。だんじりの男気に見られる剛胆とと、朝網、昼網で上がる新鮮な魚介の酒肴に鍛えられた繊細。その絶妙ともいえるバランスが、この蔵の持ち味です。

 

四 山野酒造(株)
平安の世の貴族たちに野遊びの地として愛でられてきた交野の里。その里の自然と風土に寄り添うように酒造りを営んできた山野酒造。生駒の伏流水を用い米本来のおいしさを活かすその技は、「叉や見ん 交野の御野の桜狩 花の雪散る春の曙」と詠われた片野桜を銘にいただいた酒に結実しています。

 

十 (有)北庄司酒造店
創業よりこの泉州にの地にこだわり、泉州の味にこだわり続けてきた「北庄司酒造店」。平成二年からは、蔵に伝わる旨口の伝統に、南部杜氏の軽ろ味≠フ技を加えて、自らの持ち味にさらに磨きをかけつづけています。軽くまろやかで、ふくらみのある味わいがその特長です。

 

五 大門酒造(株)
いにしへの狩り場として名高い交野が原は磐船村で文政九年、「酒屋半左衛門」として創業した大門酒造。選りすぐった米、生駒山系の清冽な湧水、但馬流の技をもって醸した酒にはこの地の自然・歴史・人の絆があふれ、愛飲家をしてこころ豊かにさせます。

 

十一 浪速酒造(有)
泉州尾崎の地がまだ海の底であった頃に、積層された貝殻層。浪速酒造の酒づくりは、その貝殻層から湧き出る珠玉の水を得てはじまりました。以来二百年、酒造に打ち込み、九代を重ねてきたこの老舗の蔵は、常に良酒へのこだわりを重ね、新たなる伝統への試みをつづけています。

 

六 長龍酒造(株)
酒を飲む人それぞれに、心から頷いていただける酒を。そんな志を、「なるほどの酒」のひと言に込めて、河内の国で真摯な酒づくりをつづける長龍酒造。伝統の技、真味を知り尽くす南部杜氏「下坂正幸」を中心に、蔵人ひとりひとりが、まごころで醸す酒づくりに取り組んでいます。


 

これらの酒蔵は大阪保険医協会雑誌の大阪の文化シリーズ第一弾として大阪の地酒十一蔵めぐり≠ナ特派員が取材し紹介されました。
        (98年2月号〜5月号)